その時私は行きつけの中華料理屋で、好物の青椒肉絲定食を食べていた。

野菜はピーマンが好きだ。ビタミンCと筋トレで風邪予防。最高である。


そしてまた電話が鳴る。知らない番号だろうがピーマン中だろうが、気付いた電話は何でも出る。

新しい話は常に、新しい番号が運んでくるものだから。


「TBSのニュースキャスターという番組の制作会社ですが。」

箸の代わりにペンを持たなくては。

「今、中高年のみなさんが筋トレをされているので、中高年専門ジムの心身健康倶楽部さんを取材させて頂けませんか。」

早くペンを。
連れを置いて席を立つ。好物を食べ終わったかどうかも、もうわからない。
耳と肩に携帯を挟んで会計した。ご馳走さまは言えなかった。

外に出る。早く拠点に戻らなくては。
この話を私で終わらせてはいけない。なんとしても、日々同じ志で頑張っている仲間に繋いでいかなくては。
毎週一生懸命にトレーニングをなさるお客様方に、あなたの選択は間違っていないんですよと伝えなくては。

しかし戻るべき場所までのルートには、確かな無電波エリアがある。誤って通行しては、電話が切れてしまう。
諦めてしんみち通りの隅で立ち止まった時、一緒に歩みを止める人がいた。
振り向くと、最強の助っ人が立っている。
「どうした?」無言で聞いてくる。そう言えば、さっきの中華料理屋から一緒だった。

焦るな。大事な案件にあたった時こそ、早く仲間を探せ。
その方が、より強い力で応じる事が出来る。
電話を代わろう、今すぐに。
アンカーにバトンを渡すように、私は握りしめていた携帯電話を手放した。

「お電話代わりました。代表の枝光です。」

ペンなどなくたって、Nキャスは取材に来てくれる。
サラリーマン世代が筋トレで頑張っている映像が欲しいと。
それもごく近日に。

枝光はどんな要望にも応じるだろう。
呼応してくれるトレーナーやお客様はたくさんいるはずだ。

そう信じる事が出来る。
健康と筋トレを大切にする皆さんは、いつだって本当に、素晴らしいのだから。