肩甲骨は首・背骨・肩・肋骨と連動して動く上半身の土台のような存在で、肩甲骨周りが固まると肩こりや首こりが抜けにくくなってしまいます。
「肩や首まわりがいつも重くてだるい」
「姿勢を正そうとしても、気づくと背中が丸まっている」
「なんだか呼吸が浅くて、胸が広がりにくい気がする」
そんな不調を感じる方も、肩甲骨のストレッチを行えば改善されるかもしれません。
そこでこの記事では、椅子に座ったまま無理なくできる「肩甲骨周りストレッチ」を9つ紹介します。
誰でも簡単にできるものを紹介しますので、ぜひ気軽に試してみてください。
肩甲骨周りが硬いとどんな不調が起こりやすい?

肩や首のこりは、実は肩甲骨周りの硬さが原因になっていることが少なくありません。
肩甲骨は首・肩・背骨・肋骨と連動して動いているため、肩甲骨周りが硬くなると上半身全体の動きが制限され、さまざまな不調が起きやすくなります。
デスクワークやスマホを見る姿勢が長時間続いたり、運動量が減ったりすると、肩甲骨まわりの筋肉がこわばって動きが小さくなってしまうのです。
ここからは、肩甲骨周りが硬いと起こりやすい具体的な不調について解説していきます。
肩こり・首こりが慢性化する
肩甲骨の動きが悪くなると、肩をすくめたような状態が続き、首から肩の筋肉が常に緊張してしまいます。
本来、肩甲骨は「下に下げる」「背中側に寄せる」といった動きで肩の位置を正しく保っていますが、この動きができなくなると肩が前に出て、いわゆる「巻き肩」の姿勢になります。
巻き肩になると首が前に突き出た状態になり、首や肩の筋肉に余計な負担がかかり続けるため、肩こりや首こりが慢性化してしまうのです。
マッサージを受けても数日でまた辛くなる場合、筋肉のコリだけでなく、肩甲骨が正しく動かせていないことが根本的な原因かもしれません。
肩が上がりにくくなる・痛みが出やすくなる
腕を上げる動作は、肩の関節だけで行っているわけではありません。
実は肩甲骨が上に回転したり、上下に動いたりすることで、腕全体がスムーズに持ち上がる仕組みになっています。
この仕組みを「肩甲上腕リズム」といいます。
ところが肩甲骨の動きが硬いまま無理に腕を上げようとすると、肩の関節だけに負担が集中してしまい、「腕が引っかかる感じ」や「上げると痛い」といった症状につながることがあります。
すでに痛みがある場合は無理をせず、痛みが出ない範囲で少しずつ肩甲骨を動かしていくと、肩全体の動きが改善されて楽になるケースは少なくありません。
呼吸が浅くなる・深く息が吸えない
肩甲骨は肋骨や胸郭(胸のまわり)とも深く関わっているため、肩甲骨周りの筋肉が硬くなると、胸が広がりにくくなります。
胸が広がらないと肺が十分に膨らまず、「深く息を吸いたいのに吸えない」「呼吸が浅くて息苦しい」といった感覚が出てくることがあります。
さらに呼吸が浅い状態が続くと、無意識に首や肩に力が入りやすくなり、それがまた肩甲骨周りを硬くするという悪循環に陥ってしまいます。
肩甲骨を大きく上下・前後に動かすストレッチを行うと、胸の前側が開いて呼吸がしやすくなり、「空気が入ってくる感じ」を取り戻せる方も多くいます。
【基本編】座ったままできる肩甲骨周りストレッチ
ここからは、椅子に座ったまま簡単にできる肩甲骨周りのストレッチを紹介していきます。
まずは片側ずつ動かして、「肩甲骨が背中の上で動いている感覚」をつかむことから始めましょう。
片側の動きに慣れてきたら、次は両肩を同時に動かして、肩甲骨周り全体をより大きくほぐしていきます。
焦らず順番に進めていくことで、効果的に肩甲骨の可動域を広げることができます。
肩甲骨周りストレッチ1.肩甲骨の上げ下げ

肩甲骨の上げ下げのやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手はだらんと下ろして、肩と首の力を抜く
- 右肩だけをすっと持ち上げる
- 「ストン」と落とさず、じわっと下へ伸ばすように肩をおろす
- 右肩を30秒続けたのち、同じ動きで左肩も30秒行う
反対側の肩はに力を入れず、呼吸を止めないように注意してください。
このストレッチで大切なことは、肩甲骨が背中の上で「上がる→下がる」という動きをしっかり感じ取ることです。
大きく動かそうとするよりも、「肩を自分でコントロールできている感覚」を大切にしながら、呼吸を止めずにゆっくり繰り返しましょう。
肩甲骨周りストレッチ2.肩の前後(外転・内転)

肩の前後(外転・内転)のやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手はだらんと下ろして、肩と首の力を抜く
- 右肩を「前に出す→後ろに引く」の順でゆっくり繰り返し動かす
- 右肩を30秒続けたのち、同じ動きで左肩も30秒行う
前に出すときは、手のひらを内側に向けると動かしやすく、後ろに引くときは、手のひらを外側に向けると動かしやすくなります。
肩を動かす速さよりも「前後にしっかり動いているか」を意識し、呼吸を止めないようにしましょう。
このストレッチで大切なことは、肩甲骨が「開く(外転)」と「閉じる(内転)」を繰り返す感覚をつかむことです。
前に出す動きだけで終わらせず、後ろへ引く動きまで丁寧にコントロールすることで、肩甲骨の動きをしっかり感じられるようになります。
肩甲骨周りストレッチ3.肩回し(順回し)

肩回し(順回し)のやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手はだらんと下ろして、肩と首の力を抜く
- 右肩を「前に出す→上に持ち上げる→後ろを通って下へ下げる」の順で回す
- 右肩を30秒続けたのち、同じ動きで左肩も30秒行う
肩を下げるときは、急がず大きく回し、呼吸を止めないように意識しましょう
このストレッチでは、肩だけを回すのではなく、肩甲骨も一緒に「前後・上下」へ大きく動かして可動域を広げることが大切です。
特に下げる動きが重要で、肩をストンと落とすのではなく、肩甲骨を下方向へ深く伸ばしていく意識を持つと、背中側の筋肉までしっかり動かせます。
肩甲骨周りストレッチ4.肩回し(逆回し)

肩回し(逆回し)のやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手はだらんと下ろして、肩と首の力を抜く
- 右肩を「後ろに引く→上に持ち上げる→前を通す→下へ下げる」の順で回す
- 右を30秒続けたら、左も同じ動きを30秒行う
逆回しの際も、動きが小さくならないようにできる範囲で大きく回し、呼吸を止めずにゆっくり行いましょう。
このストレッチでは、肩甲骨を「後ろから前へ」動かす流れを作り、背中側の硬さをほぐしやすくすることが大切です。
肩甲骨が背中の上で立体的に動いているイメージを持つと、肩だけで回してしまうクセを防ぎ、効果的に肩甲骨を動かせます。
肩甲骨周りストレッチ5.両肩同時に動かす

両肩同時に動かすストレッチのやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手はだらんと下ろして、肩と首の力を抜く
- ストレッチ1〜4で行った動き(上げ下げ、前後、順回し、逆回し)を、今度は両肩同時にそれぞれ30秒ずつ行う
片側ずつで肩甲骨の動きをつかめたら、次は両肩同時に動かすことで、肩甲骨周り全体をより効率的にほぐすことができます。
両肩を同時に動かすと、片側ずつのときには感じにくかった「背中全体が動く感覚」や「左右のバランス」が分かりやすくなります。
呼吸を止めず、左右の肩甲骨が同時に動いている感覚を意識しましょう。
肩甲骨周りストレッチ6.手の甲を背中に当てて肘を前後(外転・内転)

手の甲を背中に当てて肘を前後のやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手の甲を背中に当て、手を軽く開いて握り込まない状態にする
- 少し体を丸めながら肘を前にぐっと出す(肩甲骨を開く)
- 体をまっすぐにし、肘を後ろへ引く(肩甲骨を閉じる)
- 上記の動きを30秒ほどゆっくり繰り返す
このストレッチは、肩甲骨の「開く」と「閉じる」を背中側ではっきり感じやすくするのが狙いです。
呼吸を止めず、腕の力で動かすのではなく、肩甲骨が背中の上で前後に動いている感覚を意識しましょう。
手を強く握り込むと腕や肩に余計な力が入ってしまうので、指先はふわっと力を抜いておくのがポイントです。
肩甲骨周りストレッチ7.片側ずつ大きく前後に動かす

片側ずつ大きく前後に動かすストレッチのやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手の甲を背中に当て、手を軽く開いて握り込まない状態にする
- 左側はできるだけ動かさず固定し、右側だけ肘を「前→後ろ」と大きく動かす
- 右側を30秒行ったら、左側も30秒行う
このストレッチで大切なのは、片側ずつ行うことで「肩甲骨を大きく動かす感覚」をよりはっきりつかむことです。
片側だけ動かすと、肩甲骨が開いて閉じる動きを背中側で明確に感じられるようになります。
腕の力で引っ張るのではなく、肩甲骨が背中の上で前後に動いている感覚を意識し、呼吸を止めずにゆっくり続けましょう。
【応用編】座ったままできる肩甲骨周りストレッチ
基本編で肩甲骨の動きに慣れてきたら、次は応用編に進みましょう。
ここからは、肩甲骨の動きをより立体的に、大きく動かすストレッチを紹介します。
手を背中に回した状態で行うため、肩甲骨が背中の上で動く感覚をさらにはっきり感じられるのが特徴です。
腕の力で無理に動かすのではなく、肩甲骨そのものを動かすイメージで行うと効果的です。
肩甲骨周りストレッチ8.前から持ち上げながら回す

前から持ち上げながら回すストレッチのやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手の甲を背中に当て、手を軽く開いて握り込まない状態にする
- 肩甲骨を「前から持ち上げる」ように意識しながら、小さな円を描くように肘を前から後ろに回す
- この動きを30秒行う
このストレッチの狙いは、肩甲骨を上げる動きと回す動きを連動させて、肩甲骨全体を立体的に動かすことです。
運動量が増える分、腕の力で回そうとすると首や肩が力みやすくなります
あくまで肩甲骨が主役だと意識して、勢いをつけずゆっくり行いましょう。
動きは小さくてもいいため、呼吸を止めないように注意し、無理のない範囲で続けてください。
肩甲骨周りストレッチ9.後ろから持ち上げて前へ回す

後ろから持ち上げて前へ回すストレッチのやり方
- 椅子に浅めに座り、背すじを楽にまっすぐ伸ばす
- 両手の甲を背中に当て、手を軽く開いて握り込まない状態にする
- 肘を後ろに引いて、肩甲骨を「後ろから持ち上げる」ようにしながら、前へ回す
- この動きを30秒行う
このストレッチの狙いは、肩甲骨を後ろ側から持ち上げる動きを作り、背中側の硬さをほぐすことです。
肘を後ろに引いた位置から始めることで、肩甲骨が背骨に向かって寄った状態になり、そこから持ち上げて前へ回す動きがスムーズに入ります。
腕の力で回そうとせず、肩甲骨が動いている感覚を優先し、呼吸を止めずにゆっくり行いましょう。
ストレッチをより効果的に行いたい方は心身健康倶楽部へ!

肩甲骨周りのストレッチはやり方自体はシンプルでも、「背中側が動いている感覚がつかみにくい」という方が少なくありません。
肩や腕の力で動かしてしまうと、肩甲骨周辺よりも首や肩だけが疲れてしまい、かえって逆効果になることもあります。
今回紹介したストレッチは、心身健康倶楽部でも多くのお客様が実際に取り組んでいるものになります。
「ストレッチをやってみたけど効いている気がしない」「正しくできているか分からない」という方は、ぜひお気軽に心身健康倶楽部へご相談ください。
座ってできる肩甲骨周りのストレッチ9選!肩こり・姿勢・呼吸を改善|まとめ
今回紹介したストレッチは、椅子に座ったまま肩甲骨を「上げ下げ」「前後」「回す」という基本動作で動かし、最後は応用編でより立体的に動かしていく内容です。
肩や首が凝っていると感じる方、姿勢を正したい方はぜひ一度試してみてください。
自分でストレッチをしてもうまくいかない時は、プロの指導やサポートを受けることも一つの手です。
心身健康倶楽部では、中高年の方でも無理なく続けられるように、今の体の状態に合わせて丁寧にサポートします。
肩甲骨周りをもっと楽に動かしたい方、肩こりや姿勢、呼吸の浅さを根本から改善したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
枝光 聖人
パーソナルトレーナージャパン株式会社
心身健康倶楽部代表取締役
パーソナルトレーナーとして現在も活動中で、日々お客様を対応している。
中高生の皆様の日常に特化したパーソナルトレーニングの指導と教育を得意とする。
過去25年以上にわたる実績をもとに、中高生専門パーソナルトレーニングジムを全国展開中。
保有資格
心身健康トレーナー養成スクール 総長 人間総合科学大学大学院 心身健康科学修士 厚生労働省認定 ヘルスケアトレーナー






